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bymarin
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始まりの日2

sideマリン

閃光が走った。
それまで真っ暗だった空間が裂けて
一瞬にして光に包まれた。

眩し過ぎる光に目を開けられずにいると
頭上から声が降ってきた。



久しぶりに聞いた人の声に驚き
目を見開く。

「なんか美少女出てきた!」

声の主は、本当に驚いた様子で私を凝視ししながらまくし立てていた。

「えっえっ!?これPCのウイルス的な奴なの?どうしたらいいの?てか誰?」

久しぶりに飛び込んできた景色の情報量の多さに頭がパンクしそうだった。
息を二度、三度吐き気持ちを整える。

「初めまして、幸運な方。私はあなたの願いを叶えるものです。」

はやる気持ちを抑えつつ、できる限り冷静な口調で続ける

「私を出してくださり、ありがとうございます。罪部深き私を出してくれた方…その贖罪のため、あなたの願いを3つ叶えましょう。」

スカートの両すそ持ち、少し横にひきながら頭を下げる。
これで終われるんだ。
やっと解放される。

喜んですぐに願い事を言われるかと思ったが、思いのほか沈黙が続いた。
願い事を迷っているのだろう。
人とは欲深きもの…いきなりおいそれと決まらないのは仕方ない。

相手の様子を眺めながら願い事を待っていると
紡がれた言葉は意外なものだった。

「3つの願いを叶えたら貴方はどうなるの?」

「??私でしょうか?」

「うん。てか、名前はなんていうの?」

なんでそんなことが気になるのだろうか
好奇心?

「約束の地へ魂を返します。名前はすでに返してしまっているのでありません。」

「ふ~ん、それは死ぬってこと?」

「名前を返した時点で半分死んでいるようなものですが
あなたの願いを叶えることで呪縛から解き放たれて完全に死ぬことになります。
されど、気にしないでください。私はそれが望みなのです。」

「死ぬことがあなたの望み?」

「はい。朝も夜も…月日の流れすらわからない暗い檻の中で、老いもせず孤独に過ごす事は死よりも苦痛の時間でした。
これでやっと終わりにできるのです。ここにたどり着くまで1時間しか経っていないのか、それとも10年経ったのか…
私にはわかりません。
この贖罪の旅を終わらせるため、さぁ願いをどうぞ。私が叶えましょう。」

「じゃあ、遠慮なく願いを叶えてもらおうかな。」

「…はい。」

いよいよだ。
これで終わる。
これでよかったのだ。いや、いいも悪いもない。


私には初めから選択権などないのだから。

そう、初めから…生まれ落ちたあの日から。

「願いその1.今日から貴方の名前はマリンね。」

「え?」

「願いその2.私の事はマスターと呼ぶこと。

「え?え?」

「願いその3.私の命令にはすべてYESと答えること。以上!」

「ま、待ってください!どういうことでしょうか!!??」

「つまり今日からマリンちゃんは私のペットだよ♪」

「私があなたのペット!?」

「こらこら、マスターと呼びなさい。」

頭がだいぶ混乱している。
フワフワと定まらない頭でとにかく情報を整理するためにひたすらしゃべりつづける。

「え、えっと。ま、マスター。私はこれからここに住むということでしょうか????」

「そーゆーこと。これからよろしくね。マ・リ・ン・ちゃん」

「いや、でも「私の命令はすべて?」…はい。」

「よろしい。」

「でも…私は生きていいのでしょうか。これは贖罪の旅なのです。名と魂は一心同体ですから…」

早く私も帰らないと

最後の言葉は声にすることができなかった。
もう、生に未練などないはずなのに…

「どんな罪かわ知らないけど、ファイルを開けた時点で旅は終わっているし、名前は私があげた。
『マリン』この名前があなたの新しい名前で、新しい人生。この名前がココにある限り、マリンはこの世界にいていいんだよ。」

「っ!!」

この世界にいていい

はじめて言われた言葉だった。

他人に疎まれながら生きてきた私には一生縁のない言葉だと思っていた。

涙が溢れて止まらない。
もうだいぶ前に枯れたと思っていた涙が頬を伝う度
また新しい涙が溢れた。

いつの間にか声をあげて泣いている私を抱きしめながら
温かい掌が私の頭を何度も撫でた。
ここにいていいんだと、訴えているような温かさにしばらく涙を止めることができそうになかった。


生きていいんだ。

ここから新しい人生が始まる。
初めて訪れた世界で何もわからないことばかりだけど
今はただ、これから始まる『時』に思いを膨らませる。



生きよう、今度こそ自分の人生を。


こうして、マスターの命令によって異世界生活をスタートすることとなった。





marin
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