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bymarin
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マスターという人

プロローグ2

マスターという人


Sideマリン


マスターと出会い1日経ったが、私はまだ混乱していた。


初めての世界、初めての出会い、初めての自由。


何もかもが初めて尽くしで完全にキャパオーバーになっていた。


「まだ夢の中ではないのでしょうか…?」


そうだ、まだあの真暗な空間の中で私は夢を見ているんだ。

それとも幻覚?

あんな空間にいたら頭がおかしくなっても不思議じゃない。


P!P!P!P!…


乾いた電子音が部屋全体に響き渡る。

結構なボリュームだ。


私はビクッと肩を震わせて

恐る恐る音の方に目をやると、マスターの枕元にある四角い機械から音が出ていた。


マスターは半開きの目でうっとおしそうにソレを操作して音を止めた。

まだ眠いようでウーウーと唸りながら睡魔と葛藤しているようだった。


「ふふっ」


自然と笑いがこみ上げてきた。

昨日出会ったこの人は、神様のように思えた。

だが今は、ただの子供のようだ。


私に名前を与え、居場所を…命をくれたこの人は神様なんじゃないかと本気で思っていたが、今の姿からは昨日のような神々しさは一切感じられない。


私の笑い声に気づいたマスターがコチラをチラリとみた。


「おはよ、マリン。」


やっぱり夢じゃなかったのかと独り言のように呟いて、名残惜しそうに布団から出てきた。


「おはようございます。マスター。」


「ん。」


ボサボサの髪の毛をさらにワサワサとかきながら、半開きの目で小さく相槌を打つ。


「マリンはよく寝られた?」


「はい。とても良く眠れました。」


嘘だ。

本当は少しも寝ていない。

寝てしまったらまたあの暗闇に戻るのかと思って目を閉じることが出来なかった。


「チョ~~~~~~~~~ップッ!」


そう言うとマスターが手のひらを垂直にした状態で思いっきり私のおデコに振り下ろしてきた。

私は思わずギュッと目を瞑り、衝撃に備えたがどれ程待っても衝撃は訪れなかった。


恐る恐る片目を開けると

ニヒルと笑ったマスターが私のおデコにコツンと振り下ろした。


全く痛くなかった。


「????????」


一体何をされたのかわからない。

私の思いを悟ったのかマスターが笑っていた。


「私に嘘をつこうだなんて、なかなかいい度胸してるじゃないか(笑)。次嘘ついたらこれの100倍チョップするからね♡」


ヒッと小さく悲鳴をあげてコクコクを首を立てに振ることしか出来なかった。


「ん、宜しい。」


やっぱりマスターはすごい人だ…

一人で感心しているとマスターはいつの間にか朝食を作り始めていた。










マスターにとって休日をダラダラと過ごすのは至福の時間…らしい。


お昼ご飯も食べたあとダラダラとしながらお互いのことを話ていた。


「ふ〜ん、マリンちゃんは色々大変だったんだね。」


一通り身の上話をしたあとマスターはいつも通りの口調で言った。


「まるでおとぎ話を聞いてるみたいで全然実感沸かないから、気の利いた事言えくてごめんねー。」


「そんな!聞いて下さってありがとうございます。」


「マリンちゃんはいいこやな〜」


ケラケラと笑いながらいくつめかのチョコレートを食べた。

KitKatと書かれた赤い包装の中に割れ目のあるチョコレートの板が入っていて、食べると中にサクサクとしたものが入ったお菓子だ。


とっても美味しい!!!


ガツガツ食べてはいけないと大事に大事に食べているが、手が止まらない。

さっきご飯食べたばっかりなのに…


マスターはコーヒーという飲み物を飲んでいるが、私は飲めなかった。

どうやら苦いのは苦手なようだ。

代わりに紅茶というものを入れてもらった。紅茶は元いた世界の飲み物にとても似ていて飲みやすい。


そういえばずっと気になっている事があった。


「私の名前は何故マリンにしたのですか?」


「あぁ、それはね。マリンの目の色がマリンブルーの色だったから。海を閉じ込めたみたいなキレイな瞳だなって思ってマリンにしたんだよ。」


「マリンブルー…」


「この世界での色の慣用色名。海っぽい青色のことだよ。」


「なるほど、そうでしたか。」


私の種族にとって海は畏怖の存在。

穢の象徴だった。

なるほど、私にピッタリな名前だ。


「まぁ、というのは後付の理由でね。」


「?」


「1番の理由は、私の名前に海の字がはいってるからかな。

主従関係の基本は名を縛ることだからね♡」


???


はてなマークでいっぱいの私にマスターはまたケラケラと笑いながら続けた。


「ん〜、つまり、お揃いの名前を付けたかったって事だよ。家族の証にね。」


「っ!!ありがとう、ございます。」


涙が出そうになるのを堪えながらお礼をいう。声が少し震えてしまったからきっと泣きそうなのがバレバレだと思う。


「なんか騙してるみたいで心苦しいなぁ」


マスターの言葉の意味がわからかったがきいている余裕が無かった。


「それと、誕生日だけど

こっちの世界と元いた世界じゃ色々違ってわかんないと思うからさ

7月15日ね。日本じゃ海の日って言って祝日だから。」


「誕生日まで!ありがとうございます!」


マスターは時々難しい事をいうときもあるし怖いときもあるけど、基本的にいつも優しい……

この人となら、この先の時間も楽しく暮らせて行けそうだと実感した。


「これからも宜しくお願いしますね、マスター」


いつかマスターに恩返しできるような自分になろう。


小さな目標を心に刻んで、穏やかな日々の小さな一歩を踏み出した。
marin
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